政府は16日の閣議で、ローマ字の表記方法について、現在広く使われている「ヘボン式」を基本とする新たなルールに変更することを決定しました。これを受け、22日に内閣告示が出される予定です。現行の表記方法を定めた1954年の内閣告示は廃止され、国のローマ字表記の決まりが約70年ぶりに改定されることになります。
訓令式からヘボン式へ転換
現行の内閣告示では、「し」を「si」、「ち」を「ti」と表す「訓令式」を一般的な表記法として定めてきました。しかし、日常生活や国際的な場面では、「し」を「shi」、「ち」を「chi」と表すヘボン式がすでに広く浸透しています。こうした実態を踏まえ、文化審議会は今年8月、ヘボン式を基本とする新たなローマ字表記ルールを文部科学省に答申していました。
新ルールの具体的な表記方法
新しい表記ルールでは、ヘボン式に基づき、「つ」は「tsu」、「じ」は「ji」、「しゃ」は「sha」、「じゃ」は「ja」と表記します。
また、「あんまん」のような撥音の「ん」は「n」を用いて「anman」と表します。
「鉄板(てっぱん)」のような促音は、子音字を重ねて「teppan」とつづります。
長音や定着した表記への配慮
長音で発音される語については、母音の上に横棒を付ける長音記号「マクロン」を用いる方法のほか、母音字を並べて表記することも認められます。
一方で、「Tokyo(東京)」「matcha(抹茶)」「judo(柔道)」など、すでに社会に定着している表記については、変更による混乱を避けるため、直ちに改めることは求めないとしています。
教育現場や固有名詞への影響
これまで小学校の国語では訓令式による指導が行われてきましたが、2026年度以降はヘボン式に切り替わる見通しです。ただし、新しい告示では、科学や芸術などの専門分野、個人名や団体名、過去の作品や文書の表記について、変更を求めないことが明記されています。人名や団体名のローマ字表記についても、当事者の意思を尊重するよう配慮するとしています。
今回の改定は、国際社会や日常使用の実態に合わせたものといえます。約70年ぶりとなるローマ字表記の見直しは、日本語表記の在り方を改めて考える節目となりそうです。

